仕立て屋の恋(ネタバレあり)
変態とは変態である前に紳士でなければいけない。
そんな変態紳士の物語。
私調べで2017年度No.1の傑作。
【勝手に星付け@映画】
・仕立て屋の恋 ★★★★★
※ネタバレあり!
あらすじ→孤独で無口な仕立て屋のイールは、向かいの部屋に住む魅力的なアリスの姿を1人のぞき見ながら、彼女への想いを募らせてゆく。アリスは彼を利用すべく徐々に彼を誘惑。彼女の裏切りを感じながらも、彼が貫いた愛の結末は…。(Amazonより抜粋)
タイトル的にあまり好きな感じではないなぁと回避していたら、モテない変態の純愛スリラーだと伺い………、
それは大好物(かも知れん)とさっそく借りてまいりました。
結果、大好物でした!!!
主人公のイールは青白いぽっちゃりした顔に見事なハゲ頭、ペットはネズミ、趣味は覗きで且つ、性犯罪の前科あり…………。
これはモテません。 モテる要素がどこにもない。
そんな彼の日常といえば、近所の住人には蔑まれ、ろくに口をきいてもらえなければ、小麦粉を投げつけられるetc…。
しかし彼はそれを全て受け入れた上で、慎ましやかな生活を送っています。
なぜならイールには毎日、向かえのアパートに住むアリスを密かに覗く趣味があり、彼女を一方的に愛することが彼の心の支えになっていたから。
↑うーん、見事な変態紳士!!!
物語はある殺人事件から始まります。
若い女性が死体で発見され、お約束通りに警察は性犯罪歴がある彼を第一容疑者とします。
職場や立ち回り先にもしつこく姿を現す刑事の追求をのらりくらりとかわし、毎晩、いそいそと覗きに精を出すイール。
彼には守るべき"秘密"があり、それは純粋な愛だった。
でも覗きはあっという間にアリスにバレます。
バレたのにも関わらず、アリスはイールに急接近!
どう見たって裏があるのに、そこはやっぱりモテない変態。
コロっといきます。
強かな女の処世術をこれこそ究極の愛!と勘違いに次ぐ勘違いを重ね………赤裸々に過去を語り、海外への駆け落ちを促します。
実は、殺人事件の真犯人はアリスの恋人でアリスは事後共犯。
そしてイールは偶然にもその現場を覗いていたんですねー。
でも通報しなかったのはアリスを愛していたから!!!
↑一方的にストーキングしてただけで口もきいたことないのに"愛"と言い切るイール氏。
やっぱり変態ですねー。
が、彼は変態だけど、変態紳士です。
堂々とアリスにプロポーズし、駅で彼女と落ち合う約束をします。
ところが彼女はイールを裏切り、殺人犯の濡れ衣を着せて警察に通報。←サイテー。
すべてを知ってもイールはアリスを許す。
「笑うだろうが、僕は君を恨んでいない、死ぬほど切ないだけだ」
そう言い残したイールは逃亡し、自殺とも事故とも言い切れない死を遂げる。
落ちていく彼の目に、窓辺に立つアリスがうつる。
落ちていくイール。
見下ろすアリス。
この対比がすごく切なくて実に美しい。
アリスは結局、海外に逃げたことで自分が共犯だとバレるのか嫌だったんだろうか。
最後の最後まで、アリスがそこまでイールを嫌ってるようには見えなかった。
むしろ、好意を受け入れてるように見えたし、私はほんとに駅に現れる気さえしてた。
この複雑な女心は…………なんなんだろうな。
とにかく可哀想なのは、イールであって、彼はド変態ではあっても最後まで紳士だった。
これじゃあんまりじゃないの?くそビ×チめ!!!!ってなるところを、
ラストのラストの大オチで胸がすかっといたしました。
一言でいうと変態vsくそビ×チの映画なんですが、
ずっと劇中で流れ続けたブラームスが、とても良い雰囲気を作り出してるし、
脚本も丁寧で、1989年制作でも古さは全く感じなかった!!!
変態で究極の紳士が出てくる純愛スリラー、「仕立て屋の恋」 とにもかくにもおすすめです(=ΦωΦ=)