グッバイ、レーニン!(後半ネタバレあり)
【勝手に星付け@映画】
グッバイ、レーニン! ★★★★☆
※下の方にネタバレあり!
あらすじ→最近のコメディはカップルのロマンスなどを描くものが多いが、『グッバイ、レーニン!』は、単に面白いだけでなく新鮮味がある意欲作である。映画は共産主義が終焉する前の東ドイツから始まる。主人公アレックス(ダニエル・ブリュール)の母親(カトリーン・ザース)は生粋の共産主義者で、彼が抗議デモに参加して警官に捕らえられたのを見て、心臓発作を起こしてしまう。彼女は8ヶ月間昏睡状態に陥ったが、その間にベルリンの壁が崩壊してしまった。目を覚ました母親の弱った体にショックを与えたくないアレックスは、共産主義がまだ存在していることに偽ることにした。『グッバイ、レーニン!』では、アレックス、母親、そして彼らを取り巻く人々の世界において、ウィットに富んだ風刺と現実世界のバランスがうまく取られている。面白い映画で、とてもお勧めだ。(Bret Fetzer, Amazon.com)
なんとも分かりやすい映画だけども、安易なウェルメイドプレイに走ることを良しとしない映画!
………というとつまらなそうだけど、めっちゃ泣いてきました!!!!!
設定からしてコッテコテのコメディにできたはずなのにその裏側にある日常を淡々と描いたのが非常に好感度高い。
外側から見た東西統一は、非常にゆるやかに且つ、友好的に行われたように見えたけれど、市井の人間たちが日常の様々な変化に戸惑い、軋轢が生まれたことも想像にかたくないけれど、
この映画はその日常の些細な変化を淡々と描き出す。
東ドイツに住むアレックスの家族。
幼い頃、父親は西側に愛人を作り亡命後、音信不通に。
その反動で徹頭徹尾、社会主義に傾倒した母親は、十数年後、デモに参加したアレックスが警官に殴られるのを見たショックで心臓発作を起こし、昏睡状態に。
母親が昏睡してる間に、ベルリンの壁は崩壊し、東西ドイツは統一。西側の資本主義がなだれ込み、サッカーW杯でドイツが優勝。
大学を中退し、勤務先のバーガーキングで働西側の恋人できる姉。
アレックスには看護師の恋人ララができる。
↑ちょっといろいろ詰め込みすぎじゃない?って突っ込みはありつつ、まぁ、分かりやすい変化かな、とも思う。
主人公のアレックスは、医師から次に発作を起こしたらアウトだと警告され、昏睡状態から目覚めた母に東西統一を徹底的に隠す決意を固める。
ここから彼の涙ぐましい努力が始まる。
壁を塗り替え、家具家電から衣服にいたるまで西側のものをそっくり排除し、姉やその恋人、ララ、友人知人を説き伏せ、母が知る東ドイツを完全復元!!!
母がTVを観たいといえば友人と偽のTV番組まで作る始末。
しかしこの描写はドタバタ感はなく、全てありふれた日常の光景として描き出される。
姉と会話しながら、ジャムを西側→東側の瓶へと入れ換える。
それは笑いもハラハラドキドキもなく、当たり前の光景。
「俺、今、瓶の中身入れ換えますがそれがなにか?」である。
ウケ狙い演出できたはずなのになー、この辺の監督の手腕は見事!!!
「東側のダサい服なんか着たくない!」「こんなの間違ってる!」
アレックスの完璧ぶりに反発するも次第に流されていく姉やララ。
そうなんだよなー、例え大きな枠組みが代わったからといって日常ってそんなに劇的に変わったりしないんだ………と思い知らされる。
協力してくれる人たちがまた優しいんだ……。
この映画には善人もいなければ悪人がいない。
ただそこには"日常"があるだけ。
アレックスの猪突猛進型の身勝手さには呆れるけど、開き直り方にはあっぱれ!
中盤、介護疲れで居眠りしてしまったアレックスを置いて、母親はこっそり外出。
そこには西側の人間や車、コカコーラの看板が溢れている。
大ピンチ!と思わせといて、見事に嘘ニュース番組で誤魔化す!
もうそれは母のためなのか、アレックス自身の願望のかわからなくってくる。
行方不明だった父が見つかり、亡命の真実が明かされた時、家族は嘘は嘘のまま崩壊していく。
再び心臓発作を起こした母親のために、父親を見つけ出したアレックス。
病院では再会したものの、話しかけるかどうか迷う父に娘は踵を返す。
このシーンはぐっと来ました。
そして最後の大博打に打ってでたアレックス。
そんなアレックスを背後から見つめる母の優しい目。
その全ては、母親のために奮闘したアレックスへの愛。
嘘を内包したアレックスの愛はそれにどう応えただろうか。
それは最後までわからない。
正しいか正しくないか、それだけでは計れない深い深い愛と日常の細やかな描写にすっかり胸がつまった。
以下、ネタバレ。
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タクシーの話はできすぎだろー!!!
序盤に提示された伏線の回収はよかったけれど、ちょっとできすぎだわー!!!
あとララ!ララさ、こっそりネタばらしはないだろーよーッ!
それは母親の死後、ララの口から語られるとか、実は遺書に書いてあったとか…………お涙ちょうだいな展開用だろうー!!!
でも待てよ、それがないからよかったのかもー。
涙鉄板な母親の死ぬシーンもなし。
コメディにもならず、お涙ちょうだいにもならす、ただ乾いた日常を描くのみ。
彼が信じたかった真実に気付いた母。
それは母もまた信じたかった真実だったのかも知れない。
全く系統は違うけど、「灼熱の魂」を思い出した。
コメディの棚にあると思いますが、コッテコテなコメディでもなく、
その裏側を描く日常の映画。
おすすめします(*´ー`*)