シラフで死ねるかっ。~酔い闇の映画祭り~

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孤島の王(ネタバレあり!)

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【勝手に星付け@映画】 
 
・孤島の王 ★★★★☆ 
 
 
 
あらすじ→1915年にノルウェーオスロフィヨルドにある孤島バストイ島の少年矯正施設で起きた少年たちによる反乱事件をもとにした実録サスペンスドラマである。(Wikipediaより)。 
 
 
 
………と書くと、横暴な看守vs虐げられた囚人!の典型的な映画を思い浮かべると思いますが…………その通りです! 
 
いわば、少年版のマグダレンの祈り!! 
 
しかし爽やかな青春反抗期物語ではございません。 
 
ノルウェーの寒々とした風景、凍てついた海。 
 
矯正施設とは名ばかりの見せしめの懲罰や、強制労働、看守の虐待の描写は目を背けたくなるほど悲惨。 
 
淡々と抑制がきいた描写だけに、胸がヒリヒリします。 
 
しかし!しかしですよ!
 
少年らは大なり小なり、犯罪者なわけですYO!
 
エーリングなんて人を殺しといて矯正施設にいくんだから半ば自業自得なんですな!
 
マグダレンの祈りは、これでもか!と自分が犯した罪を叩き込まれ、反省と償いの日々なのに対して、
 
孤島の王は、徹底的に少年=被害者の図式。
 
うーん、ちょっと納得いかん。
 
まぁ、そんなことは置いといて……←いいのか?いいってことYO!
 
特筆すべきは、反乱のきっかけを起こすのが"優等生のオーラヴ"である!というところ。 
 
この普通とは違うセオリーがとても良い!!!!! (ほんとにほんとに)軽微な罪で6年も服役してきた彼のざらつくような痛みが手に取るようにわかる。
 
規則なんかクソ食らえの不良少年エーリングとは、真逆の痛み。 
 
大人に逆らわず、目をつぶり、耳を塞ぎ、いわば死に体で生きてきたオーラヴにとって、 声を押し殺すことで得られる息苦しさこそが唯一の「生」だったのかも知れない。 
 
エーリングのバカバカしいほどのエネルギーに触れ、オーラヴは大きく呼吸をすることを思い出し、胸にたまっていた怒りを吐き出した。 
 
全てを見てきたオーラヴだからこそ、その怒りは周囲に波及し、それは反乱の原動力になり得たのではないだろうか。 
 
反乱の際、「虐待」を受けていたのが「彼」だけではなかったことを物語る少年たちの目は悲しい。 
 
余計な台詞がないために、表情や演出から推し量るしかないのだが、 島にいる少年たちの芝居が見事!!!!! 
 
長い長い人生の"少年"と呼ばれる短い期間を誇張もせず、矮小もせず、真っ直ぐにそのまま演じています。 
 
様々な思惑がからむ大人たちにそんなん知るかボケェ!とばかりの反乱シーンは観ていてスカッとするし、 
 
エーリングの最後の台詞もお前、今、そんなこといったらあかんて!っと涙がぽろぽろ…………。 
 
大人って汚いなぁ、でもあたしも大人なんだよなぁ…………この場合、自分だったらどうしていたか、オーラヴのように振る舞えたか、
尻馬に乗るだけか。 
 
最後まで観て、孤島の「王」とは果たして誰だったのかを考える。 
 
この作品には、支配者と被支配者しか存在せず、王の座は目まぐるしく変わる。 
 
いわば冷静な第三者は観客しかいない。 
 
ならば、王は観客か? ふとそんな思いにかられる1本でした。