シラフで死ねるかっ。~酔い闇の映画祭り~

映画レビューを書いてます。たまにネタバレ。たまに毒。たまに涙。

ある天文学者の恋文。【ネタバレなし】

f:id:mikasarae:20180406172618j:plain

【勝手に星付け@映画】

ある天文学者の恋文 ★★★★☆

あらすじ→著名な天文学者エドと彼の教え子エイミーは、皆には秘密の恋を謳歌していた。

しかし、そんなエイミーの元に突然届いたエドの訃報。

現実は受け入れられないエイミーだが、彼女の元にはその後もエドからの優しさとユーモアにあふれた手紙やメールや贈り物が届き続ける。

エドの遺した謎を解き明かそうと、エイミーは彼が暮らしていたエディンバラや、かつて二人で時間を過ごしたイタリア湖水地方のサン・ジュリオ島などを辿りはじめ、 そこで彼女が誰にも言えずに封印していた過去をエドが密かに調べていたことを知るが―。 (Amazonさんから)

いやー、泣いた泣いたッ!

ひさびさ号泣スイッチ入りまくりで、ラスト15分くらい延々と泣き続けました。

予告編では、サスペンスやミステリーの作りになってますが、超ストレートな恋愛ものでした。

この映画、評価はいまいち………らしいです。

その理由はおそらく、

①暗い。

②愛と究極のエゴ。

天文学要素が低い。

………の、三点じゃないかなと(勝手に)想像します。

ま、私も否定しません。←しないのか!

①"暗い"でいえば、ほんとに暗い。起伏がほとんどない一本調子で、全編が救いようがないほど話も登場人物も画面も暗い!

しかし愛する人の死に直面し、しかも公にはできない"秘密の関係"だった視点から見れば、エイミーが抱える喪失をそのまま画面に映し出した暗さはむしろ胸に刺さりました。

なので、良い"暗さ"と判断しますッ!

②愛と究極のエゴは、もうほんとに…………その通りッ!

二人の愛だけが至高!美しい!!と既婚者の立場でエイミーと愛し合い、

死後も彼女の人生に口を出し、彼女を翻弄し、傷付け、縛り続けるエドの"贈り物"は彼の究極の自己満足でしかない。←中盤くらいで非常にイライラポイントあり!

でもそれでも、美しいんですよねー。

二人が過ごした6年間は、眩くて美しい。

なぜならそれは二人がそう信じるから。←かなり自分勝手だけどねーッ!

しかし一見、脳内お花畑で"二人のために~世界はあるの~♪"状態の二人だけども、

中盤からラストにかけて、エドが生前に対峙していた苦しみや痛みが一気にエイミーにのしかかってくる。

自分たちは誰を苦しめ、傷付け、何を壊したか。

そうした生前のエドの苦悩をこの映画は誤魔化さずにきちんと描いてました!

しかもそれを提示するのがビデオレターやエドの周囲の人びとで、肝心の彼が今はこの世にいない………というのがまた良い!

誰かの死により、残された人に転機が訪れる……という典型的な作りだけど、描き方はとても静か。

だから暗くて平淡な映画になっちゃったのかなーとも思うけど。←これ、残念ポイント!

天文学要素が低い。←これ、すんごいマイナスポイントッ!!!!!

タイトルにもある"天文学"を製作側があまり重要視してなかったのか、あえて排除したのか………。

アカデミックな展開になりそうなシーンにさしかかると、はい、次のシーン!

うええええ、そこもうちょっと詳しくーッ!となる(´-ω-`)

何故、エドが死後のエイミーの行動や心理を読み続けられたのか、そして超新星と人が最期に放つきらめきとの関係性…………天文学抜きには語れない物語の「肝」をこの映画はどっかに置いてきてしまった。

ほんとにものすごく残念!!!

おかげでアカデミックな闇メロドラマが、ただの闇メロドラマになっちゃった!

けれども、人が持つ愛や情や憎しみに簡単に白黒つけられないし、

違う側面から見れば、エゴの塊のような二人であっても、過ごした時間の美しさは変わらない。

同じ監督の「鑑定士と顔のない依頼人」と同様、欺瞞に満ちた中にも一欠片の真実はあり、愛や美しさは欺瞞とは別の場所にあると感じた。

以上、長文申し訳ございまソーリー。