ラースと、その彼女(ネタバレあり)。
悪い変態はいけませんが、これは良い変態による良い映画です。
コメディーの棚に置いてありますがね、コメディーなんかじゃないです!!!
もっと根っこのとこにある深い深い愛と慈しみの記録。
【勝手に星付け@映画】
・ラースと、その彼女 ★★★★☆
【ネタバレ】あります!!!!!!!!
これはラースの成長ストーリーなのか、人ってあったかいよっていうハートフルストーリーなのか、はたまたコメディーなのか………。
もしかしたら全部、なのかな。
「全ての女は出産で死ぬ」というケラリーノ・サンドロヴィッチの戯曲のタイトルみたいな妄想にかられてるラース。
当然、彼女もいなければ、会社の人ともうまく付き合えないし、兄夫婦ともぎくしゃくしてる。
そんな中、セッ〇スドールのビアンカを"人間"の彼女として、家に連れてくる。
周りの人は戸惑いつつも優しくラースの妄想(というよりは現実)を受け入れる。
でも自分勝手なラース。
ああでもないこうでもないと難癖をつけては、周囲を拒絶する。
ほんとに自分勝手なラース。
でもその孤独や頑なさを精神科医がゆっくりとほどいていく過程や、兄夫婦との溝がうまっていく様がとても優しくて、 誰にだって(ラースほどじゃないけど)、こういう時期ってあるよなぁとほっこり。
殻を破るということは、それまでの自分を一度殺さなきゃいけない。
ラースにとってはそれがビアンカだったのかも。
最後のキスシーンにはほろっときた。
でも!でも、ですよ! 最後には人形だったって気付いてほしかったんですよ!
そうじゃなきゃ、ビアンカが悲しすぎるでしょ。
都合よく産み出されて、都合よく殺されたあと次の瞬間には墓前で次の恋人候補とデートの約束ってなんじゃそりゃ?!ですよ。
ビアンカが人形だったと認めて、サヨナラ今までの自分!って、デートの約束なら分かるのだけど………。
なんなの、ラース! って、前半はラースに、後半はビアンカに感情移入しながら観ちゃいました。
この映画はカメラワークが秀逸で、前半はビアンカを真正面から撮る絵が多いのだけど、 (見たまんまセッ〇スドールな絵図) 中盤から後半は、斜め後ろからだったり、引きだったり、人形に見えない角度で撮ってるんですね。
うまいなぁ、と。
取り立てて、美男美女が出てるわけでもない地味な映画なのだけど、ぐっと惹き付けられました。
ひさびさの良い方の★4つです。