シラフで死ねるかっ。~酔い闇の映画祭り~

映画レビューを書いてます。たまにネタバレ。たまに毒。たまに涙。

裏切りのサーカス(ネタバレなし)

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【勝手に星付け@映画】

裏切りのサーカス ★★★★★

※ネタバレはしてませんが、少し内容に触れてます!

あらすじ→東西冷戦下、英国情報局秘密情報部MI6とソ連国家保安委員会KGBは熾烈な情報戦を繰り広げていた。 ある策略により、英国諜報部<サーカス>を去ることとなった老スパイ・スマイリーの元に、困難な任務が下される。 それは、長年に渡り組織の幹部に潜り込んでいるソ連の二重スパイ<もぐら>を捜し出すこと。 標的は組織幹部の4人、<ティンカー(鋳掛け屋)、テイラー(仕立屋)、ソルジャー(兵隊)、プアマン(貧乏人)>。 過去の記録を遡り、証言を集め、容疑者を洗いあげていくスマイリー。浮かび上がるソ連の深部情報ソース<ウィッチクラフト>、そしてかつての宿敵、ソ連のスパイ<カーラ>の影。やがて彼が見いだす意外な裏切者の正体とは―。 (Amazonさんから)

不親切映画もここまでくると芸術だな!と思った1本。

「ぼくのエリ」と同じ監督さんですが、ぼくのエリの方がよっぽど親切!!!

特筆すべきは、渋さ爆発!の主演ゲイリー・オールドマンシドアンドナンシーの時の危うさはどこへやら…………オールバックにメガネ、スーツをびしっと決めて物腰が優雅な英国スパイを演じてます。←あ、どっかで聞いた設定。

はっきり言って、くっそかっこいい!!!

もちろんメガネ、スーツをびしっと決めて物腰が優雅な英国スパイのC・ファースも出ています!

あらすじを読んで、アクション抜いたキングスマンver.的な………ばっちばちの頭脳戦が展開する作品だと思ってましたが、

任務と愛の間で苦悩するスパイたちの切なく悲しい物語でした。

あ、もちろんハラハラドキドキも充分!!!

現在とは違うローテクなスパイは、書類の受け渡しシーン1つとってもヒヤヒヤさせられっぱなし。

カンバーバッチの保管庫のシーンなんか、冷や汗ダラダラ…心臓バクバク…。

そして忠誠や規律に縛られ、駆け引きや裏切りに満ちた冷酷な世界であってもこの映画の登場人物たちは人間味に溢れてる。

ゲイ、出世欲まみれに、日和見男、男女差別………。

スマイリーの妻も男ができて家出中。

男と遊んだ請求書(?)が自宅に届いたり………と、なかなかに香ばしい日々。

回想シーンの中でも妻アンを愛しつつも振り回され、奔放な妻をすっかり諦めてると思いきや、外出する際には必ずドアに木片を挟んで外出する。

侵入者の確認もあるけれど、木片が落ちている=アンが帰宅した、という意味もあるために、彼のこの行動はなかなかに切ない。

全てが終息したのち、雨の中に立ち尽くす者、立ち去る者、迎える者、1発の銃弾、涙のように流れた一筋の血、微笑む者。

そして椅子に座りこちらを見据えるスマイリー。

これぞ、老獪。これぞ、圧!!!!

ド迫力すぎて言葉もありませんでした。

状況を説明するセリフはほとんどなく、回想と現在が交互に描かれるために1回観ただけでは全容がつかめないかも!←私は無理でしたヽ(・∀・)ノ

ただ細部を頭に叩き込みながら観ていると、あとから、ハッ!としたり、あっこれは!となる伏線はたくさんあります。

FBFの方に聞きましたが原作は英国では誰もが知る有名な小説ということで、こういう不親切、且つ、引き算な作りが成り立つ映画そうなんですねー。

逆にいえば、不親切=無駄がない!全シーンに必ず重要な鍵が隠されてる!ってことです。

情報過多の親切ムービーに飽きた方、切なさに打ちのめされたい方、メガネにスーツのおっさんスパイが大好物な方、ぜひご覧くださいませ。