シラフで死ねるかっ。~酔い闇の映画祭り~

映画レビューを書いてます。たまにネタバレ。たまに毒。たまに涙。

ミリオンダラーホテル(ネタバレなし)

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【勝手に星付け@映画】

ミリオンダラーホテル ★★★★☆

(ネタバレなしだけど、内容に踏み込んでます)。

あらすじ→U2のボノの原案をヴィム・ヴェンダースが映画化した愛の物語。ロサンゼルスのダウンタウンにあるミリオンダラー・ホテル。社会からはじき出された人々が住みついた場所。そこに暮らす知能障害者のトムトムは、親友イジーの死に傷ついていた。が、イジーが大企業の御曹司だったことから彼の父親がこのホテルにFBI捜査官を派遣する。これがきっかけとなり、トムトムはずっと恋心を抱いていたエロイーズと急接近。一方、捜査は住人たちの思惑と絡み合い事態は急展開をみせる……。

(allcinema ONLINEより)

期待値アゲアゲで借りてきたものに、帰宅したらなんだか急にオシャく×映画な気がしてくることってありませんか?

観るかなぁ、観ないかなぁって散々悩んだあとに…………まぁ、観たわけですけどもッ!

結論、オシャ×そ映画ではありませんでしたー!

おしゃれではあるけど、くそ映画ではありませんでしたッ!

もしこれから見られる方は本編の前に予告編の最初の30秒だけでもご覧になることをおすすめしますッ!

ジャンルはTSUTAYAはラブストーリーの棚にあったけど、映画サイトではスリラー。

でもどっちも間違ってない。

スリラーとして観ると、前半はかなり不親切スリラーです。

FBI捜査官のスキナー(メル・ギブソン)のコルセットの謎や、人間関係、殺人事件の全景がなかなかに分かりづらく………一見、意味がなさげな他愛ない会話だけで進んでいくストーリー。

ま、難解な監督ヴィム・ヴェンダースだからその辺りは致し方ない。←でも本作は分かりやすい方なのかなぁ。

影の使い方や、光の差し方の演出がものすごく良くて、とっちらかった場面でも観るべき場所をきちんと示してくれるのと、登場人物たちの心情を良く表していた。

後半、様々な謎が明かされていく過程はちょっと喋りすぎじゃない?ともなるけど、

明かされた真実があまりにも哀しくて、この辺で、もどかしくもこの先の運命が見えてくるのが悲しい。

トムトムの馬鹿げた髪型も愛らしく見えてくるし、娼婦のエロイーズとのラブシーンは歴史に残る爽やかさ。

そもそも死んだイジーの父親が「ユダヤ人の息子が自殺するはずないッ!殺人だッ!犯人を見つけろッ!」

って無茶な号令を出したのがきっかけで、スキナーは捜査を始めるけど、ホテルの住人たちは頭がぶっ飛んだ人たちのみ!

自分はビートルズにいて、全曲作曲したのに印税がもらえないオジサンとか、イジーの自称婚約者やら、話にならんわけですよッ!

そもそも「バカといえば僕の名前があがる」という主人公トムトムでさえ、知的障害があり、周りの人間は彼が他人の悪意やずるさを見抜けないことをわかった上で、こきつかい、見下してる。

それでもトムトムは「貧乏舘の執事」のつもりで、パシりにされまくり。←ほんとに胸くそ!

あげくに殺されたイジーの同居人の絵を高値で売るために、イジーが描いたことにして画商を巻き込み悪巧み。

でもトムトムは善悪もわからずに、みんながハッピーになるならいいんじゃなーい!とどこまでも純粋に信じてる。

彼の目にはエロイーズしか映らず、エロイーズに純粋な愛を捧げることしか考えてない。

FBI捜査官のスキナーの手先になり、トムトムを嵌めようとするが、

彼の不器用で純粋な愛に触れ、トムトムに惹かれていくエロイーズ。

エロイーズ役のミラジョヴォヴィッチのこの役で女優魂開眼!

繊細で危うげで、それでも強い。

ラストの台詞。

「僕に自我があるなんて、エロイーズに会うまで知らなかった」

トムトムは自分が"頭が弱い"人間で、無知なことをわかっていた。

わかっていたけど、それがどう周りに作用するかはわかっていなかった。

容疑者として追われることになったトムトムをみて、イジーの父親に怒りをぶつけるスキナー。

スキナーのコルセットの意味もここで明かされる。

でも全ては遅すぎて、「人は虚構を信じる」という言葉どおりにトムトムは飛び立っていく。

トムトムとエロイーズが最後にかわした会話が未来を夢見た会話だっただけに、

すごく悲しかった。

イジーはずるい。

彼の死は、自殺とも殺人ともとれる。

どちらにせよ、他人を利用したずるい死だ。

エロイーズへの愛が2つの違った結末を迎えた。

すごく悲しい映画だった。

と、真面目に語ったところで、私的なマイナスポイント!

住人たちのキ×ガイっぷりが薄いッ!

キチ×イ設定だったはずなのに最後、真っ当にストーリー作っちゃってるんだから、オイオイ前半はなんだったのよー?と。

この辺りはもう少し×チガイ設定を貫いてほしかったー。

あとU2!ボノが原案だから仕方ないかもだけど、映画音楽には合わないよー!

セリフや情景をそのまま歌詞にして歌いあげるセンスのなさねっ!

映画音楽は本編の助奏!これじゃU2のPVだわぁ。

それでもじわじわと真綿で首を締められるようにのっぴきならない状態に落ちていくトムトムが妙に滑稽で、おかしかったりもした。

ちょっと難解な部分もあるけど、じっくりしっとりと観れる映画です。

おすすめ(*´ω`*)♪